日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律(日本語教育機関認定法)が成立し、令和5年6月2日に公布されました。同法律の施行日は令和6年4月1日です。
つまり、2024年4月から日本語教師は国家資格「登録日本語教員」になることが決まりました。
漠然と国家資格化することは知っていても、何が変わるのか、どうなるのか、受験資格は何なのか、よくわかってい人が多いと思います。
そこで、今回は、2023年11月現在、出ている情報を分かりやすくまとめました。
この記事を読んでもらえば、概ねの事は分かるようにしているため、少し長くなってしまう事、ご了承ください。
【こんな人に読んでもらいたい】
日本語教師の国家資格化について知りたい人
登録日本語教員になるにはどうしたらいいのか知りたい人
経過措置・移行期間について知りたい人
国家資格化のメリットを知りたい人
ニュース・日本語教師を国家資格にする法律が成立
2023年5月26日、日本語教師を国家資格にすることなどの日本語教育機関認定法が参議院本会議で可決・成立しました。
コロナで一度は、国内の在留外国人は減少したものの、2022年6月末には296万人と過去最多を更新しました。
可決された法律では大きく2つの事が決まりました。
- 一定の要件を満たす日本語教育機関を文部科学大臣が適正な教育機関であると認定する
- 日本語教師の国家資格を創設し、筆記試験に合格して実践的な研修を修了すれば「登録日本語教員」として文部科学大臣の登録を受けることができる
①の日本語教育機関は、今後指定日本語教育機関と呼ばれるようになります。
また、②の日本語教師の国家資格ですが、こちらは、一部日本語教育機関で働く教師のみに求められるものになります。
「登録日本語教員」とならなくても、日本語教師として働く事はできます。
(参照:NHKニュース“日本語教師を国家資格にする” 法律が成立 在留外国人増加で)
登録日本語教員はいつから?

先に触れたとおり、2023年5月26日に「日本語教育機関認定法」の法案成立により、2024年4月から日本語教師は国家資格「登録日本語教員」になります。
2024年からの施行となると「すぐに国家資格を取る必要があるのか」という不安の声も上がると思います。現役の日本語教師には経過措置が設けられていますので、ご安心ください。
登録日本語教員の資格取得に係る経過措置は令和6年4月1日~令和11年3月31日までとなっております。
日本語教師が国家資格化になったワケ
そもそも、今のタイミングで何故国家資格化することになったのでしょうか。
分かりやすく2点にその理由をまとめました。より詳しく知りたい人は、令和4年12月に行われた日本語教育推進会議の資料をご参照下さい。
①日本語教師の質と量の確保

コロナ渦で一度は落ち込んだものの、また日本語学習者数は増加傾向にあります。
しかしながら、日本語教員数は約4万人前後と横ばいで、また、約半数がボランティアであると言われています。
そのため、日本語教員の質が一定でない可能性があります。
こういった事を踏まえ、認定日本語教育機関と呼ばれるようになる日本語教育機関では、一定の教育の質が保証された日本語教育機関を選択できるような環境を整備していくことを想定しています。
②日本語教師の不足
日本語教師の処遇改善や社会的認知を高め活躍できるよう、国が実施する試験に合格し、実践的な研修を修了した者が国の登録を受け、教師自らのキャリアを社会に証明できるようになる事を想定しています。
しかしながら、現状の「登録日本語教員」制度だと、正直、あまり待遇面や社会的認知が高くなるとは、考えずらいと思われます。
正直、「登録日本語教員」は指定日本語教育機関にて、留学生に日本語を教えられる、という事だけの様にも感じます。
留学生以外の、生活者や就労者などへ教える場合は、特に「登録日本語教員」になる必要はなく、日本語教師を続けられます。
また、オンライン等で海外に住んでいる方に教える場合も、特に「登録日本語教員」になる必要はありません。
今後対応が変わる可能性はありますので、随時最新情報をチェックしていくようにしましょう。
国家資格化で何が変わるの?
2024年4月からの新制度で、「留学」ビザを持つ留学生を受け入れる認定日本語教育機関で働ける日本語教師の要件が変わります。
- 「民間資格」から「国家資格」へ
- 日本語教師の求人応募要件が変更
- 「登録日本語教員」として登録できる
①「民間資格」から「国家資格」へ
冒頭から何度も言っている通り、日本語教師の資格は国家資格となり、登録日本語教員として国家資格を取得することができるようになります。
ただし、これは、単純に日本語教師養成講座に通ったから国家資格取得、という訳ではなく、別途、登録日本語教員のための試験や実習等を受講しなければいけないのが、現状の案です。
また、国家資格の「登録日本語教員」とならなくても、日本語教師として働く事はできるので、ご自身がどのような機関で、どのような対象者に日本語を教えていきたいかによって、取得の有無の選択をすることになると思われます。
②日本語教師の求人応募要件が変更
今後、在留資格が「留学」となっている人に対して、日本語を教える場合、日本語学校等の教育機関は、認定日本語教育機として登録しなければいけなくなります。
そして、この認定日本語教育機関で働けるのは、登録日本語教員のみとなります。
そのため、求人にも「登録日本語教員」である事が記載されるようになると思われます。
まだ、開始前ですし、移行期間もあるため、100%すぐにこうなる訳ではないと思いますが、いずれ「登録日本語教員」のみ応募可能となります。
③「登録日本語教員」として登録できる

先に申し上げた通り、国家資格取得となるには「登録日本語教員」として登録する必要があります。
「日本語教育能力検定試験に合格したから国家資格取得」「日本語教師養成講座修了したから国家資格取得」という事でありません。
(今後、変更になる可能性はありますが、現状ではこうです)
「登録日本語教員」となるには、別途試験等を受けて合格しなければいけません。
全員が登録日本語教員になる必要があるの?
結論、違います。
先に書いた通り、「留学」ビザを持つ留学生を受け入れる認定日本語教育機で働ける日本語教師の要件が変わるだけですので、例えば、オンラインで海外に住んでいる方に日本語を教える場合などには、必要ではありません。
制度変更により、留学生を受け入れる日本語教育機関について、一定の基準に基づいて文部科学省が審査・認定する新たな制度が創設されます。
新制度に基づき認定を受けた日本語学校は「認定日本語教育機関」とされ、ここで働くことができるのは登録日本語教員のみとなります。
認定日本語教育機関 | 認定ではない日本語教育機関 | |
文部科学大臣認定 | 〇 | × |
留学生に対して日本語教育 | 〇 | × |
就労者に対して日本語教育 | 〇 | 〇 |
生活者に対して日本語教育 | 〇 | 〇 |
登録日本語教員 | 登録日本語教員ではない教師 | |
認定日本語教育機関での勤務 | 〇 | × |
認定ではない日本語教育機関での勤務 | 〇 | 〇 |
今後、どのような機関で働きたいか、どういった人に教えたいかによって変わってきます。
登録日本語教員になるには
ここまで、認定日本語教育機関や登録日本語教員というものが今後存在するという事が分かった所で、気になるのは、どうやったら登録日本語教員になれるのか、という点ですよね。
結論、6通りかあります。
現行(2023年現在)では、下記の3つのいずれかに当てはまれば日本語教師になれます。
①「日本語教育能力検定試験」合格
②「日本語教師養成講座420時間」修了
③大学・大学院で「日本語教育主専攻(または副専攻)」修了
まず、現在、ご自身が上記3つのうち、どれを持っているのかでスタートが変わってきます。
また、②日本語教師養成講座240時間を卒業した方の場合は、その講座が必須の教育内容50項目に対応した日本語教員養成であるかどうかでも、対応が異なります。。
現在、日本語教師をしている方は、下記のどれに当てはまるかで受ける講座や試験が異なります。
現在持っているものはどれ? | 当てはまるのはどれ? | ||
1 | 「日本語教育能力検定試験」合格 | 1 | 昭和62年4月1日~平成15年3月31日に合格 |
2 | 平成15年4月1日~令和6年3月31日に合格 | ||
2 | 「日本語教師養成講座420時間」修了 | 1 | 必須の50項目に対応した課程修了 |
2 | 必須の50項目対応前の課程修了 | ||
3 | 大学・大学院で 「日本語教育主専攻(副専攻)」修了 |
①「日本語教育能力検定試験」合格者と②「日本語教師養成講座420時間」修了者は、さらに2つに分類されるため、既に5パターンに分類されることが分かります。
そして、ここに、上記以外の方で、平成31年4月1日(法施行5年前)~令和11年3月31日(法施行5年後)の間に法務省告示機関で告示を受けた課程、大学、認定日本語教育機関で認定を受けた課程、文部科学大臣が指定した日本語教育機関(認定を受けた日本語教育機関が過去に実施した課程)で日本語教員として1年以上勤務した者以外の方の対応も加わり、6パターン、登録日本語教員になる方法として挙げられています。
① | 「日本語教育能力検定試験」合格 & 昭和62年4月1日~平成15年3月31日に合格 |
② | 「日本語教育能力検定試験」合格 & 平成15年4月1日~令和6年3月31日に合格 |
③ | 「日本語教師養成講座420時間」修了 & 必須の50項目に対応した課程修了 |
④ | 「日本語教師養成講座420時間」修了 & 必須の50項目に対応前の課程修了 |
⑤ | 大学・大学院で「日本語教育主専攻(副専攻)」修了 |
⑥ | 現役日本語教師だが、※1以外の方 |
※1 平成31年4月1日(法施行5年前)~令和11年3月31日(法施行5年後)の間に法務省告示機関で告示を受けた課程、大学、認定日本語教育機関で認定を受けた課程、文部科学大臣が指定した日本語教育機関(認定を受けた日本語教育機関が過去に実施した課程)で日本語教員として1年以上勤務した者
より詳しく知りたい方は、
尚、登録実践研修機関と登録日本語文化庁から発行されている「登録日本語教員の資格取得ルート」をご確認ください。教員養成機関については、こちらの文化庁のHPをご参照下さい。
試験や実習内容について

登録日本語教員になるまで、下記の流れになります。尚、上記にご紹介した、現在当てはまるご自身の状況に応じて、試験と実習などが免除になる場合もあります。
しかし、この措置、令和6年4月1日~令和11年3月31日までの経過措置となっており、その後は未定です。(一部、令和15年3月31日まで)
- 講習Ⅰ→講習修了認定試験
- 講習Ⅱ→講習修了認定試験
- 基礎試験
- 応用試験
- 実践研修
経過措置期間中は、これら全てを受けなければならない人は存在しないようです。
どのパターンの人であっても、いずれかは免除になります。
詳しく知りたい人は、文化庁から発行されている「登録日本語教員の資格取得ルート」をご確認ください。
講習について
講習には、経験者講習というものがあり、これは現役日本語教師が対象になり、オンラインで行われます。
講習対象範囲 | 時間 | |
講習Ⅰ | 平成12年報告により新たに追加された 【社会・文化・地域】及び【言語と心理】の2区分 |
90分×5コマ程度 (各コマで単元確認(10問程度)を実施) |
講習Ⅱ | 平成31年報告により教育内容として新たに追加されたもの | 90×10コマ程度 (各コマで単元確認(10問程度)を実施) |
入管法改正や「日本語教育の参照枠」等、近年の状況変化を踏まえた 知識のアップデートが特に必要と考えられる教育内容 |
(参照:登録日本語教員の経験者講習について)
この講習後、試験が行われます。
基礎試験について
令和5年12月10日(日)に、日本語教員試験試行試験が行われ、その後調整がされると思われますが、概ね下記の内容になります。
- 試験内容:言語そのものや言語教育、世界や日本の社会と文化等、日本語教育を行うために必要となる基礎的な知識及び技能を有するかどうかを測定する。
- 試験時間:120分
- 出題数:100問
- 出題形式:選択式
- 採点:1問1点(100点満点)
- 合格基準:各区分で約7割程度の得点があり、かつ総合得点で約8割程度の得点があること
試験は、下記の様な割合で出題される見込みとの事です。
区分 | おおよその出題割合(案) |
(1)社会・文化・地域 | 約1割 |
(2)言語と社会 | 約1割 |
(3)言語と心理 | 約1割 |
(4)言語と教育(教育実習を除く) | 約4割 |
(5)言語 | 約3割 |
応用試験について
応用試験は、その名の通り、基礎試験の内容を活用したような内容になるようです。
出題内容も多岐にわたり、実際に日本語教育を行う際の現場対応や問題解決を行うことができるかと言った事も計られます。
- 試験内容:基礎的な知識及び技能を活用した問題解決能力を測定する
- 試験時間:音声による出題 45 分・文章題 120 分(休憩 45 分あり)
- 出題数:音声による出題 50問・文章問 60問
- 出題形式:選択式
- 採点:1問2点(220点満点)
- 合格基準:総合得点で約6割の得点があること
応用試験は、割とボリュームがありそうですね。
試験の内容は、今後変更になる可能性はあります。(参考:令和5年度日本語教員試験試行試験実施概要(案))
実践研修について
実践研修とは、認定日本語教育機関において日本語教育を行うために必要な実践的な技術を習得するための研修の事を指します。
こちらは、登録実践研修機関で行う必要がありますが、現時点では、まだ登録は開始されていないため、どこが対象になるのかは、分かりません。
(参考:登録実践研修機関及び登録日本語教員養成機関の登録手続き等)
登録日本語教員の登録料はいくら?

登録日本語教員の登録料は4,000円です。
現時点では、一度登録をすれば有効期限なくr登録日本語教員として名乗れるようです。
また、基礎試験並びに応用試験の受験料は、19,800 円です。
ただし、基礎試験の免除をされた方は、 17,300 円、経過措置により基礎試験及び応用試験の免除をされた方は 5,900 円です。
国家資格化のメリット
ここまで、登録日本語教員になるために必要な事を記載してきましたが、正直、登録日本語教員にならなくても、日本語教師を続けることはできます。
では、国家資格「登録日本語教員」を取得するメリットは何になるのでしょうか。
個人的には、下記の2点だと感じています。
- 留学生にも日本語を教えられる
- 国家資格所有者となれる
①留学生にも日本語を教えられる
これは、冒頭から何度も申し上げている通り、登録日本語教員にならないと、留学生(在留資格:留学)には、日本語学校(今後、認定日本語教育機関と呼ばれる予定)で教えられない事となります。
日本の大学や専門学校に行きたいと夢見る若者に、今後教えられない可能性が出てきています。
一度、登録日本語教員になってしまえば、有効期限はないとの事ですので、これからも留学生に教えていきたい方は、是非、取得しておく必要があります。
つまり、今後は「留学生に日本語を教えている」と言うだけで、イコール「登録日本語教員」と言う事になります。
②国家資格所有者となれる
登録日本語教員としての国家資格の取得は、正直難しくはありませんが、それでも、国家資格を持っているという点は、多少有利になる事があるでしょう。
個人でオンライン等で教えている方など、留学生を対象としていなくても、自分のアピールとして「国家資格取得済み」と言えるのは、メリットと言えます。
まとめ
今回は、日本語教師の国家資格化について、現在の情報を分かりやすくまとめました。
まだ開始はされていませんが、令和5年12月10日(日)に、日本語教員試験試行試験が行われた後、また何か新しい情報が出るかもしれません。
ここでも、最新情報がで次第、アップデートしていきます。