日本語教師としての働き方は、多様にあると感じています。
会社員時代は、みんな同じ企業の社員で毎月決まった給与を貰って、残業すれば残業代が付いて、年に2回程度賞与を貰って、年に1回程度昇給があって、といったように、みんながほぼ同じ様な流れで働いていました。
しかし、日本語教師になってから、会社員時代と同じような働き方もありますが、それ以外の働き方で働いている人の方が多いという事を知りました。
現在、私自身、会社員時代とは全く違った働き方をしております。
そこで、今回は、日本語教師の働き方の一つで求人でも時々目にする「業務委託契約」についてご紹介していきます。
実際に、私が業務委託契約として働いている経験も踏まえて記事をまとめていきますので、今まで業務委託として働いたことのない方の参考になれば幸いです。
【こんな人に読んでもらいたい】
日本語教師の業務委託について知りたい人
今後、業務委託契約として働く予定の人
業務委託契約って何なのか知りたい人
業務委託はブラックなのか心配な人
日本語教師の働き方
まず大前提として、日本語教師の働き方には、どのようなものがあるのでしょうか。
もちろん会社員の様な働き方もあり、日本語教師の中では、そのような働き方は通常「常勤講師」と呼ばれます。
しかし、この「常勤講師」は日本語教師の全体の1割程度だとされています。
(参考資料:文化庁発行・日本語教育関係 参考データ集令和5年版)
【日本語教師の働き方】
細かくはもっとあるのかもしれませんが、大抵はこの5つのうちのいずれかの働き方となります。
- 常勤講師
- 非常勤講師
- フリーランス
- ボランティア
- インターンシップ
【フリーランスと個人事業主の違いは?】
「フリーランス」は、特定の企業や組織(日本語学校)に雇用されず、個人として独立して仕事を請け負う人を指す言葉です。フリーランスはあくまで働き方を表す呼称で、法律(税法)による区分ではありません。
一方、「個人事業主」とは、税法上の区分を意味します。個人事業主は「継続して事業を行う個人」であり、税務署に対して個人事業の「開業届」を提出しています。一定の控除が適用される青色申告が利用できます。青色申告は特別控除が利用できるだけでなく、専従者給与や経費の面でも優遇された申告方法です。
それぞれ、どの様な働き方なのか、簡単に見て行きましょう。
常勤講師
先に記載した通り、常勤講師は、いわゆる会社員とほぼ同じだと思ってください。
週5日、8時間労働が基本です。
残業もあれば、賞与・昇給も年に1~数回程度あることが大半です。
有休や社会保険など、会社員と同じ扱いを受けることができます。
仕事内容としては、クラス担任をしたり、何か行事の責任者になったり、日本語の授業をするだけでなく、学生指導や対応も日々行う必要がでてきます。
学校に来ない生徒が居ると、家に電話をしたり、場合によっては自宅に伺ったり、学校の先生の様な事もする時があります。
これプラス、もちろん日本語教師として日本語の授業もするので、時間を見つけては教案作りをしたり、家に帰ってから教案を考えたりなどしなければいけず、割と忙しいです。
昨今、「学校の先生は残業手当がつかないのに、ものすごく残業をしていてブラックだ」とテレビやネットで話題ですが、正直、日本語教師の常勤講師も似たような状況にあると感じます。
そのため、一部ネット上では「日本語教師はオワコンだ」などと言われてしまっているのだと思います。
しかしながら、日本語を学びたい、日本の大学に行きたい、日本で就職したいなど、日本に希望を持ってきている学生のために働くのは、とてもやりがいのある仕事だと思います。
その代わり、学生対応・教案作り・その他個別案件等、仕事は細かくたくさんあります。
ご自身の価値観がどこにあるかで、常勤講師で働くかどうかは選択するようにしましょう。
非常勤講師
日本語教師の約3割は、非常勤講師だと言われています。常勤講師より多い割合になります。
非常勤講師は、基本的には、日本語の授業のみをすればOKです。
一部の経験豊富な先生は、非常勤講師でもクラス担任をされている方もいます。
働き方も、週2日~など働きやすい環境です。
授業のコマ数も自分で希望を出せる事が多く、週に何コマ授業を持ちたいのか、午前中の身なのか、午後もOKなのか、自分の予定を優先することが可能です。
そのため、非常勤講師は、家庭や介護などをされている主婦の方(女性)が多くいらっしゃいます。
たくさん働きたい方であれば、何校か学校を掛け持ちしている先生もいらっしゃいます。
私も日本に居た際は、3校の学校を掛け持ちして非常勤講師として働いている時期がありました。
上手くスケジュールを調整できれば、非常勤講師でもきちんと収入を得る事は可能です。
フリーランス
ここで言うフリーランス日本語教師は、学校に所属していない日本語教師を指します。
自分でレッスンを構成して行っていたり、SNS(Youtubeやインスタグラムなど)に動画をアップしていたり、ブログや記事作成で収入を得たりする方法などがあります。
また、私の様に海外に住んでいる人や日本語学校が家の近くに無い人などで、プラットフォームを利用して、日本語を教えている人も居ます。
フリーランス日本語教師は、自由度は高く魅力的ですが、軌道に乗るまで時間がかかったり、一向に軌道に乗れないなどのデメリットがあります。
ボランティア
実は、日本語教師の約半数はボランティアだと言われています。
ボランティアなので、報酬はないと思ってください。一部の団体で、気持ちばかりもらえたりするようですが、あまり期待しない方が良いと思います。
ボランティアは、地域密着型である事が多く、ご自宅のある市区町村などでボランティアを募っていたりします。
活動場所は、公民館・小中学校・ボランティア団体の提供している場所などです。
ボランティアの場合、日本語教師の資格がなくても大学生でも活動できる場合がありますので、何となく日本語を教えるという事に興味がある人が始めやすいと思います。
最近では、海外で日本語教師ボランティアを斡旋している企業もあります。
デメリットとしては、参加費用として割と高額な金額が必要なのですが、オーストリアやヨーロッパなど中々、個人ではボランティアを探しにくい場所で行う事ができます。
興味のあるかは、下記の記事を参考にしてみて下さい。
インターンシップ
日本語教師のインターンシップは、それほど多くはありませんが、現在学生の方向けに、インターンシップを行っている学校や企業があります。
主なターゲットは、日本語専攻の大学生になるかと思います。
卒業後、日本語教師として働く事が自分に合っているのか、見極める絶好のチャンスだと思われます。
日本語教師は、20代・30代は少ないですので、新卒で日本語教師になれば、学校や企業は大歓迎でしょう。
日本語教師の実際の求人
日本語教師としての働き方が分かったところで、実際の求人は、どのような働き方で募集されているのでしょうか。
【日本語教師の求人サイト】
下記のサイトなどを参考にしてみて下さい。
どの求人にも必ず「常勤講師」なのか「非常勤講師」なのか記載があります。
海外求人の場合は、「正社員」や「契約社員」などと記載されいる事もあります。
この辺の文言の違いは、日本語学校が募集しているのか、企業が募集しているのかの違いです。
一見、求人を見ただけでは、「業務委託契約」なのかどうか分からない事もあります。
条件もよく見ると、「業務委託契約」と記載されている時があります。
「業務委託契約」を行っているのは、多くの場合企業になります。
日本語教師の家庭教師の派遣を行っている企業、オンライン上のプラットフォームを提供している企業などで「業務委託」を取り入れている事が多いようです。
日本語学校(学校法人)で、もし「業務委託契約」を行っているのであれば、少し踏み込んで詳細を確認してみましょう。
私は、今まで見た事はありません。
日本語学校と言っても、中には企業が経営している語学スクール的立場の学校もあります。
日本語学校(学校法人)との違いは、ビザ発行ができるかどうかが一番分かりやすい点です。
企業が運営しているのは、あくまでも民間の語学スクール的存在だと思ってください。
そのような場合は、業務委託が取り入れられている場合はあります。
業務委託契約とは
では、そもそも業務委託契約とは何なのでしょうか。
業務委託とは、雇用関係のない企業から仕事を委託され、特定の業務を行うことで報酬が支払われる働き方のことを指します。
日本語教師の場合、企業から依頼された業務内容(日本語の授業など)を遂行し、その報酬として、支払いが生じるといった感じになります。
企業と日本語教師の立場は、指揮命令関係にはないため、対等です。
ただ、現状としては、経験上、ある程度の企業の上の人の意見を伺ったり、企業の希望通りに動いたりしています。
一般の会社員よりも、関係性はフラットですが、やはり完全に対等とまではいかないのが、実情だと感じます。
日本語教師側のメリット&デメリット
業務委託契約は、日本語教師にどのようなメリット&デメリットがあるのでしょうか。
メリット①:自由な働き方ができる
何よりも一番は、日本語教師本人が働きたいだけ働け、請け負いたくない事は断る事がしやすいという点です。
私が業務委託契約で働いている企業にいるとある日本語教師の方は、請け負いたくない生徒さんは、はっきりと企業側に伝え、ご自身で担当する生徒さんを選んでいる先生がいらっしゃいます。
この様な事ができるのは、業務委託契約だからこそです。
メリット②:高額収入も可能
これは、上手に対応する必要がありますが、上手くスケジュールを組んだり、数社と業務委託契約を結んだりできると、会社員よりも収入が増える可能性はあります。
デメリット①:全て自分で行う必要がある
恐らく、日本語教師として業務委託契約を結んでいる場合、何か生徒さんとトラブルが生じても、企業が介入していくれると思いますが、厳密には、企業は介入しなくても問題ありません。
また、保険料の支払いや確定申告にも自分で対応する必要があります。厚生年金や雇用保険の加入対象者にも含まれません。
デメリット②:安定しずらい
業務委託契約では、企業から仕事を依頼されない限り、仕事ができません。
そのため、学生からクレームが多い、遅刻が多いなどの場合、授業の依頼がされない可能性もあります。
また、企業がいらいないと判断した場合は、契約終了となってしまう可能性もあります。
企業側のメリット&デメリット
次に、企業側のメリット&デメリットを見てみましょう。
メリット①:人件費を抑えられる
企業が従業員を抱えると給与が発生するほか、社会保険への加入や業務に必要な設備・備品の用意など多くの費用がかかりますが、一部を業務委託契約にするとコスト削減に繋がります。
メリット②:教育しなくてもいい
厳密には、企業から教育期間なども受けなくも良いのですが、現状、私の勤めている日本語スクールでは、業務委託契約の日本語教師の先生方へも、研修を行ってくれたりしています。
デメリット①:モチベーション維持が難しい
企業の社員ではないため、全ての先生方のモチベーション維持を図るのは難しいようです。しかしながら、私の契約している企業では、年に数回程度パーティーが開催され、業務委託の日本語教師も気軽に参加できます。
長く契約を続けてもらうには、上手く先生と企業とのコミュニケーションを図る必要があるのかもしれませんね。
デメリット②:指示が出せない
先に書いた通り、業務委託は対等の関係になり、指揮命令関係ではありません。そのため、企業が日本語教師に対して、指示出すことが厳密にはできない事になっています。
ただ、現状、指示とまでは言わなくても、お願い程度で企業から要望が伝えられたりする事はありますので、その辺は柔軟に対応しています。
この様に、日本語教師側にも企業側にも業務委託契約のメリット&デメリットはあります。
ただ、私の様に、海外に住んでいる日本語教師の方で、日本国内にある企業と契約を結ぶ際は、業務委託契約の方が手続きが簡単だったりします。
業務委託契約はブラックなの?
正直、私の感想ですが、ブラックではありません。
「自己責任」という点は多いですが、海外在住フリーランス日本語教師としては、業務委託契約の方が良かったりします。
ただし、注意点としては、日本国内にある学校法人の日本語学校(留学生受け入れ可の学校)で業務委託契約が結ばれる場合は、少し踏み込んで詳細を確認してみると良いと思います。あまり聞いたことがありません。
私が契約しているのは、企業で日本語スクールを運営している所です。
業務委託契約で働いてる感想
私も業務委託契約として働いていますが、現在まで特に問題なく来ております。
業務内容としては、日本語のレッスン・日本語教師関連の記事作成・教材作成をしていますが、どれもスムーズに業務をこなせています。
企業や学生とのトラブルも無く、業務委託だからなどと感じた事は、全くありません。
むしろ、業務委託だからこそ、海外に住んでいても、仕事ができているのだと感じており、逆にありがたいと思っています。
年末調整等、自分で行う必要がありますが、フリーランスとして働いている方は、全員同じ状況ですので、特段マイナスな事はないと思います。
それでも、業務委託という契約に抵抗のある方は、それ以外の契約で日本語教師ができる学校や企業で働けばいいだけの事です。
まとめ
今回は、日本語教師の業務委託契約という働き方について記事にしました。
会社員とは違い、雇用をされないという立場になるため、自己責任という点が増えますが、フリーランスとして働いていると捉えれば、特にマイナス事項や困った事はありません。
むしろ、業務委託のメリットを活かして、上手くスケジュールを調整したり、数社と契約を結んで、より収入アップを目指すことができます。
最終的には、ご自身の希望に合った働き方を選べばよいと思います。