「つらいし割に合わない」
日本語教師の方は、この言葉に共感することがあると思います。
日本語を教えることはやりがいのある仕事で、私はとても楽しいと感じています。
しかし、どんな仕事でも現実は楽しい事だけではないですよね。
授業の準備、生徒のモチベーションの維持、教材の選定の難しさ、そして給料の不足など、さまざまな悩みがついて回ります。
そこで今回は、日本語教師としてのリアルな経験をぶっちゃけ、対策やポイントも紹介していきます。
【こんな人に読んでもらいたい】
日本語教師の悩みを知りたい人
リアルな日本語教師を知りたい人
日本語教師になろうか検討している人
日本語教師はオワコン⁈
残念ながら、ネット上では、日本語教師がオワコンだという記事を目にします。
個人的には、そう言われてしまうのも、正直、しょうがないかなと感じます。
少し悔しい(?)ですが、その原因が分かるからです。
「日本語教師はつらい」「辞めたい」「食えない」
ぶっちゃけ、どれも共感できます。
これから、日本語教師になろうとしている人にとっては、かなり衝撃的な事かもしれませんが、私は、どれも今まで何度も感じてきています。
何より、日本語教師、いや、教師と言う仕事に正解がなく、どう教えるか、どうやったら学生の興味を引けるのか、難しい学生とはどうやって向き合って行ったらいいのか、など、悩みが付きません。
休みの日も、時には夢の中まで考えていて、かなり精神的に疲れてしまった時もありました。
それなのに、給料は決して高くないのが現実です。
【日本語教師の平均給与】
常勤講師の場合、年収300万円~400万円未満が一番多い層となります。
非常勤講師の場合、時給2,000円~3,000円未満が一番多い層となります。
一見、時給は高いように見えるかもしれませんが、授業準備時間を考えると、全く高くありません。
1回の授業をするのに、何時間もかかるのが当たり前で、時には何日も考えたりします。
常勤講師は、授業プラス学生対応、イベント対応など学校運営としての仕事も入ってきますので、本当に日々忙しいのが現状です。
昨今、テレビ等でも学校の教員の労働時間が長いというニュースを目にしますが、日本語教師にも同じような事が言えると思います。
では次に、実際に、日本語教師として働く中で、どんな悩みがあるのか、今回は10個挙げていきます。
私が行っている解決策や対策も一緒に紹介しますので、参考にしてもらえると幸いです。
日本語教師リアルな悩み10選
私は、日本語教師をはじめて7年が経ちます。
今まで、海外・オンライン・留学生向けの日本語学校・留学生以外向けの日本語学校と様々な場所で教えてきて、感じた(もしくは感じている)悩みを挙げていきます。
①教案作成
まず、第一に、日本語教師が誰もが毎回感じているだろう悩み、それは「教案作成」です。
初めて教えるところはもちろん、教えた事がある事でも、毎回教案作成で悩みます。
悩みとしては、大きく下記の2つがあると思います。
- 教える相手に合った内容であるか
- 文型(文法)の理解ができているか
①の「教える相手に合った内容であるか」については、教える相手が異なれば、導入の内容や例文の文章を変更したりする必要があります。
少しでも興味を持ってもらえるように、どんな事に興味がありそうか、最近話題になっている事は何なのか、などを踏まえて考えていきます。
また、グループレッスンとプライベートレッスンでは、練習問題の数ややり方などが異なってきます。
次に、②の「文型(文法)の理解ができているか」については、これは自分の理解になります。
まず、自分がきちんと正しく理解する必要があります。
何形接続なのか、どんな時に使われるのか、似たような文型(文法)はあるのか、よくある間違いは何なのかなど、色々理解した上で授業をします。
簡単な物であれば良いですが、中級・上級になるにつれて、日本語教師でも少し迷うような 文型(文法)は出て来ます。
授業中に、学習者さんから質問されてあたふたしないように、事前に色々準備しておけると◎です。
私の経験上、考えすぎると分からなくなる事が多いので、そんな時は、同僚や先輩日本語教師の方に相談してみると良いです。
違った観点からアドバイスをもらえたり、自分の考えを修正することができると思います。
②学習者のモチベーション維持
これは、正直、正解が分かりません。
教える対象者によっても、ゲームなどを取り入れた方が良いのか、それとも、雑談を少し多めにして、話す時間を増やした方が良いのか、変わってくると思います。
午後の授業だとお昼ご飯の後で、眠くなるので、そんな時は、少し体を動かせるようなゲームをしたこともあります。
どうにか色々工夫をして、少しでも印象に残ってもらえる授業作りをしているつもりです。
グループレッスンであれば、色々とゲームができますが、プライベートレッスンの場合、先生と生徒の2人ですので、学習者さんの話(趣味・仕事・家族についてなど)を日本語で話してもらったり、日本語の動画を見たりなどしています。
レッスン始めなど、時間があれば、ウォーミングアップとして、取り入れてみても◎です。
③効率的な指導
日本語教師として、一番大事な事は、日本語を教える事です。
当たり前ですが、ここがおろそかにならないようにしなければいけません。
しかし、大事な分、悩ましい点でもあります。
文法・発音・漢字など、教える事はたくさんあり、どうやれば、すっきり明確に伝えられるのか、教師の腕が試される所です。
漢字の場合は、絵を用いたりすると印象に残ってもらえやすいかと思います。
発音は、母語が影響してしまい、中々日本語の正しい発音がしずらいケースがあります。
学習者さんの様子を見ながら、ある程度でOKとするのも一つの手です。(特に初級の場合)
教え方も、あるクラス(人)では、すぐに分かってもらえても、別のクラス(人)には、中々伝わらない事もあったりします。
レッスン中は、「分かりました」と言ってくれても、次の時には忘れてしまっていたり、同じ間違いをしてしまう事だってあります。
教え方に困ったときは、先輩日本語教師の方に相談してみると、きっと良いアドバイスや方法を教えてもらえるはずです。
日本語教師の多くは、本当に心の広い人が多いので、分からない事を聞くと、色々と教えてくれます。
だからと言って、ただ分からないから聞くのではなく、自分の意見や考えを持った上で、別の方法やより良いやり方がないか相談するようにしましょう。
④個別ニーズの対応
一人ひとりの学習スタイルやニーズに合わせた個別指導の方法についての悩みもあります。
私は、プライベートレッスンも多く行ってきていますが、一人ひとり違いますので、同じ所をレッスンするので、少し内容を変えています。
特に、私がレッスンをする上で念頭に置いている事は、学習者さんが何故日本語を勉強しているのか、どんな目標を持って日本語を勉強しているかという点です。
JLPTを受けたいのか、日本に旅行に行きたいのか、日本で働きたいのか、目標が異なれば、レッスン内容も自然と変わってくると思います。
「日本に旅行に行きたい!」という人に、JLPTで出る内容をレッスン中にしても、あまり興味がわかない可能性がありますよね。
そうならないためにも、プライベートレッスンをする際は、相手の方の目標や目的を忘れずに、レッスンを考えていくと良いかと思います。
⑤クラス管理
対面でもオンラインでも、グループレッスンでの悩みもあります。
どちらの場合でも、よく発言する人、しない人、熱心に聞く人、聞かない人はいます。
特に留学生向けの日本語学校では、1クラス最大20名ですので、20名をコントロールするのは、割と難しいです。
担任になると、一人一人と面談を行う機会もあります。
「○○さんがうるさいから、クラスを変えてほしい」「自分はもっと難しい事を学びたいからレベルアップさせてほしい」などの要望を受ける時もあります。
全員が満足の行くレッスンを常に提供するのは難しいですが、できる範囲で、柔軟に対応していく事が求められていると感じます。
クラス管理で悩んだら、まずは担任の先生に相談しましょう。
割と担任の先生は、サバサバしている事が多く(今までの経験上)、話すと結構すぐに解決したりします。
⑥教材選定
教材選定に関しては、個人でレッスンを行っている人や、日本語学校でも、主任などある程度の経験がある先生が行う事が多いと思います。
私は、個人でレッスンを行っていたことがあり、その際、その人にはどの教材が良いのか、悩んだ経験があります。
【初級教材選定のポイント】
- 日本語の文字は読めるのか
- 母語は何語なのか
- 目的は何なのか
初級の人の場合は、上記の3点は重要な基準になると思います。
文字が分からない場合は、文字学習からスタートになりますし、漢字圏なのか非漢字圏なのかでも学習スピードが異なってきます。
また、日本語を学習する目的は何なのかによっても、使用する教材は変わってきます。
日本語の文字が分からない人向けに、文字学習を進めながら、少し日本語のレッスンもできるように作られたのが下記の「NIHONGO FUN&EASY」です。
私も使用しており、教師からしても使いやすいのでおすすめの1冊です。
全レッスンローマ字がありますので、この教科書を終えるまでに、ひらがな・カタカナを終わらせ、次の教科書に以降できると理想的です。
⑦学習者との関係性
常に「先生と生徒」という学校の様な関係性が良いとは限らないと感じています。
留学生対象の学校では、「先生と生徒」とはっきりしている事が多い印象を受けますが、留学生以外の方を教える際は、「○○さん」とお互い「さん」付けで呼び合う事もあります。
あまり「先生と生徒」という関係を明確にしない方が、スムーズに進む事もあると思っています。
この辺については、学校に聞いてみたり、レッスンを行いながら、相手の様子を見てどんな関係性を構築していくと、よりレッスンをスムーズに進められるか検討してくと良いです。
以前勤めていた日本語学校の先生で、生徒とすごく仲良くなって、プライベートでも遊ぶ中になっている方もいました。
何が良い悪いは無いので、レッスンを進めていく中で、お互いにとってより良い関係性を築けるとベストです。
⑧将来のキャリアパス
日本語教師としてのキャリアパスが、少し見えずらいという現状があります。
日本語教師として何十年も働いていても、非常勤講師だと、新米の先生と数百円しか時給が変わらなかったりします。
常勤講師として働いていても、昇進が「主任→副校長→校長」程度でなので、あまりそこに魅力を感じない人も居るかもしれません。
会社の様に、部署移動と言った事も、日本語教師を行っていくのであれば、ありません。
もちろん、長く日本語教師をしていれば、教えられる範囲が広がっていくので、仕事も増える可能性はあります。
ただ、それ以外で、正直どのように成長できるのか、少し見えずらいです。
一定期間、日本語学校で日本語教師として働いたら、フリーランス(自分で生徒獲得をする)として働く事もできます。
昨今は、SNSを活用して、オンラインレッスンを繰り広げている方もいます。
日本語教師としての働き方は多様です。
⑨給料
先にも少し書きましたが、日本語教師の給料は、決して高くありません。
また、大幅な昇給もあまりありません。
こういった点から、日本語教師は割に合わないと言われてしまうのでしょう。
現状、お金儲けのために日本語教師をしている人は少ないと感じます。
先生方は、日本語を教えたい、日本に興味ある人の手助けをしたいなど、人助け精神の方が強い印象です。
⑩自分のモチベーション維持
キャリアップや給料にも関係していますが、日本語教師として働く自分のモチベーションを維持するのも、割と大変な職業です。
先輩日本語教師の方で、考えすぎて悩み過ぎて、一時期うつ病になってしまった方がいらっしゃいます。
現在は、回復されていますが、やはり、正解の無い仕事であるため、真面目な人ほど、考えすぎて、体調を崩してしまう恐れがあるのでしょう。
つらくなったら、担当するコマ数を減らしてもらいましょう。
何よりも、ご自身の健康が一番です。
日本語教師に向いている人
これまで、日本語教師としての悩みを10個挙げてきましたが、皆さんは、どう感じましたでしょうか。
これらの事を踏まえて、どういう人が日本語教師に向いているでしょうか。
【私が思う日本語教師に向いている人】
- 何より、日本語を教えたい人
- 人のために何かしたい人
- オンオフの切り替えが上手な人
他にもあるかとは思いますが、今回は上記3点を挙げました。
まず何より、「日本語を教えたい人」。
日本語教師なので、当たり前ですが、ある程度、日本語や言語という分野に興味がないと続かない可能性があります。
また、先に書いた通り、日本語教師は決して給料が高くは無く、またキャリアパスも見えずらい職業です。
ですので、ボランティア精神に近い心境を持っていないと、難しいかもしれません。
それに加え、日本語を教える方法には、正解はないため、考えすぎてしまうと、週末もずっと日本語の事ばかり考えて、自分の時間が無くなる可能性があります。
オンオフの切り替えをしたり、趣味などに没頭できる時間の確保も重要です。
つらいし割に合わないのに続ける理由
ここまで、日本語教師の悩みを書いてきましたが、何故私が今でも日本語教師をしているのでしょうか。
こんなにつらいし大変な思いをしながら、日本語教師を続けられる理由として、私は「やりがい」が大きいからだと感じています。
会社員時代は、四半期ごとの目標設定などをし、上司から評価され、それが賞与に反映されていました。
しかし、目標を達成したからと言って「ありがとう」という感謝をされる機会は、さほどありませんでした。
日本語教師では、毎日学習者さんと向き合って、たくさん会話をし、「先生、ありがとう」と言われる機会はたくさんあります。
JLPTや受験をして、合格した際などには「先生の授業でやった事がでた」「授業がためになった」と言った様な事を言われれると、とても嬉しく感じます。
この様に、人から直接感謝されたり、生の声を聞けるのが、私のやりがいに繋がっています。
まとめ
今回は、日本語教師の悩み&向いている人についてご紹介しました。
日本語教師だけでなく、教師という仕事をしている人は、似たような事を感じている人も居ると思います。
少しネガティブな内容が多かったかもしれませんが、これが現実です。
これを踏まえて、日本語教師になるどうかを検討してもらえると幸いです。