初級日本語クラスの山場ともいえる「て形」。
「て形」を使ったフレーズはたくさん勉強しますので、導入や練習で使えるバリエーションを持っておくと、様々な学習者さんのレッスンに対応できるようになるはずです。
そこで今回は「て形+ください」「て形+もいいですか」「て形+はいけません」の3つのフレーズの導入や練習をご紹介します。
記事の最後では、イラストを無料でダウンロードできますので、宜しければ、レッスンでお使い頂ければと思います。
導入や練習は、学習者さん背景に合わせた内容で行っていただきたいと思っております。
ここで紹介する内容が、全ての学習者さんに合った内容とは限りませんので、ご自身の担当されている学習者さんの背景を鑑みて、ご判断いただきますようお願い申し上げます。
【こんな人に読んでもらいたい】
- て形のフレーズの導入や練習で困っている人
- これから初級のレッスンを行う予定の人
- て形の練習で使えるイラストが欲しい人
て形の作り方
まず、て形を使ったフレーズを学ぶ前に学習者さんが躓くポイントとしては、て形の作り方です。
ます形からて形への変換(みんなの日本語など)と、辞書形からて形への変換(GENKIなど)と、どちらで行うにしても、初級の学習者さんは、苦労します。
ます形→て形
辞書形→て形
いずれにしても、グループ1のルールが多いため、学習者さんは混乱します。
フラッシュカードなどで何度も練習して、定着を図ります。
て形を使ったフレーズを勉強する際は、学習者さんの定着度にもよりますが、ほぼ毎回形の練習をした方が良いと思います。
「~てください」(許可・依頼)
「~てください」は て形の中で、一番最初に学ぶフレーズかと思います。
1. できるようになること
この文型を習得することで、単なる単語の羅列から、丁寧で具体的な依頼・指示ができるよになります。
- 具体的な依頼: 「窓を開けてください」「名前を書いてください」など、相手に何かを頼むことができる。
- 指示の理解と実行: 先生や周囲からの指示を的確に理解し、行動に移すことができる。
2. 導入のポイント
「~てください」は「依頼(頼む)」と「指示(命令に近い丁寧なもの)」の二面性があります。まずは「教室内の指示」から導入し、次に「日常生活での依頼」へと広げるのが自然です。
導入例「教室内の指示」
ここでは、先生がジェスチャーを交えて行う事を想定します。
例
(耳に手を当てて)「リスニングです。聞いてください。」
(黒板/パワポなどを指して)「これ、見てください。」
(テキストを見せて)「ここ、練習してください」
導入で使う動詞は、グループ1・2・3と、偏らずに導入します。
少なくとも2つ(違うグループの動詞)の例文は提示するようにします。
導入では、可能であれば、全て同じ状況で提示できるとより良いです。
コロコロ場面が変わるより、1つの場面(または、つながりのある場面)で何個か例文が作れる方が学習者さんが混乱しにくいです。
3. 練習例
導入後、定着させるための練習をします。
A. 教室内での指示
先生が次々と指示を出し、学生が行動するゲーム感覚の練習です。
- 「立ってください」
- 「右を向いてください」
- 「ペンを出してください」
オンラインレッスンやマンツーマンレッスンでも、先生が指示を出して、その指示通りに学習者さんに動いてもらう事はできると思います。
中々オンラインレッスン中、動くことがないと思いますので、ちょっと気分転換に取り入れてみても良いかと思います。
B. 日常の依頼
イラストを用いて、その場面に合ったフレーズを言う練習です。
| 状況 | 例文 |
| 資料をたくさん持っている | 「すみません、ドアを 開けてください。」 |
| 会社でのプレゼン | 「すみません、聞いてください。」 |
| レストランでの食事 | 「すみません、しょうゆ、取ってください。」 |
| 写真撮影 | 「すみません、写真を 撮ってください。」 |

その後、会話練習など、練習も簡単なものから発展へと何種類か行います。
【会話の練習例】
A:このレストラン、おいしいですね。
B:そうですね。あ、Aさん、すみません。しょうゆ、取ってください。
A:はい、どうぞ。
B:ありがとうございます。
4. ポイント
今までの経験から、下記の事に気を付けると良いかと思います。
①「すみません」をセットにする: 日本語では単に「~してください」と言うと少し直接的で強すぎる場合があります。「すみません、~てください」とセットで教えることで、自然で丁寧なコミュニケーションができるようになります。
②「どうぞ」をセットにする:「どうぞ~ください」と「どうぞ」を付ける事で、相手に配慮と親切心が伝わります。
| 状況 | 「どうぞ~てください」 |
| お茶を勧める | どうぞ、お茶を飲んでください。 |
| 部屋に入るよう促す | どうぞ、中に入ってください。 |
| 座るよう勧める | どうぞ、座ってください。 |
| 食べ物を勧める | どうぞ、ケーキを食べてください。 |

※「どうぞ」は、相手にとって良いこと(恩恵があること)をすすめる時に使います。
③て形の定着について: 「て形+ください」はて形を習った後、恐らく最初に勉強するフレーズですので、まだて形が完璧でない事が予想されます。て形の変換練習はある程度で切り上げて、「形(フレーズ)」として言う練習をたくさんすると良いです。
「~てもいいですか」(許可)
「~てください」が「自分の意志を相手に伝える文型」であるのに対し、「~てもいいですか」は「自分の行動について相手の承諾を得る(許可を求める)文型」です。
1. できるようになること
- 社会的なマナーの習得: 自分の判断で勝手に行動するのではなく、相手に許可を得るという日本人の習慣を伝える機会になります。
- 主体的な行動: 自分のやりたいことを相手に伝え、許可を得て実行できるようになります。
- 会話の円滑化: 教室や日常生活で、「写真を撮ってもいいですか」「座ってもいいですか」と自分から切り出せるようになり、コミュニケーションの幅が広がります。
2. 導入例
「許可を求める」という機能が明確になるよう、動作+許可の組み合わせで導入します。
例文
「窓を開けてもいいですか。」
「ここに 座ってもいいですか。」
「今、電話をしてもいいですか。」

「~てください」と同じ動詞を使いつつ、文末を変えることで、「依頼」と「許可」の機能の違いを対比させても面白いと思います。
例:「座ってください」と「座ってもいいですか」⇒ 座る対象者が違う
3. 練習例
「自分には決める権限がない(相手の許可が必要な)状況」を設定します。
イラストを見て文作成
場面A:教室にて
- 「すみません。教室には入ってもいいですか」
- 「寒いです。窓を閉めてもいいですか」
- 「辞書を見てもいいですか」
場面B:新幹線にて
- 「そこ、座ってもいいですか」
- 「ここに、荷物を置いてもいいですか」
会話練習
「聞く(許可を求める)」だけでなく、「答える(許可する・断る)」までをセットにすると、会話練習としてより実用的になります。
| 許可を求める文 | 許可する文(肯定) | 遠慮してもらう文(否定) |
| ここで写真を撮ってもいいですか。 | はい、いいですよ。 | すみません、ちょっと…。 |
| 窓を閉めてもいいですか。 | ええ、いいですよ。 | すみません、暑いですから…。 |
| ペンを借りてもいいですか。 | はい、どうぞ。 | すみません、今使っています。 |
| たばこを吸ってもいいですか。 | はい、どうぞ。 | すみません、ここではちょっと…。 |

【おすすめの発展練習】
日本の電車と学習者さんの国の電車のマナーを「~てもいいですか」を使って聞き合う。
- 電車で、電話をしてもいいですか。
- 電車で、ご飯を食べてもいいですか。
- 電車で、ダンスをしてもいいですか。
- 電車で、音楽を聴いてもいいですか。
など、日本の電車のマナーを伝える機会にもなり、個人的におすすめです。
4. ポイント
①「依頼」と「許可」の混乱を防ぐ: 時々、相手に何してほしい時に「~てもいいですか?」を使ってしまうことがあります。
- 「自分が」やりたい時は「~てもいいですか」
- 「相手に」やってほしい時は「~てください」 という対比を示す。
②否定の返答(断り方)の重要性: 「はい、いいですよ」だけでなく、「すみません、ちょっと…(と言って断る)」という「曖昧な拒絶」も同時に教えるといいです。日本人は「いいえ」とはっきり言わないことが多い、という文化背景もあわせて伝えると◎。
「~てはいけません(禁止)」
「~てはいけません」は、単なる命令ではなく、「社会的なルール、禁止事項、マナー」を理解し、伝えるための文型です。
1. できるようになること
- ルールの理解: 公共の場での禁止事項(喫煙、駐輪、撮影禁止など)を正しく理解し、守ることができる。
- マナーの周知: 友達や周囲の人に対して、「それはマナー違反だよ」と注意を促すことができるようになる。
- 安全の確保: 危険な行為を未然に防ぐための警告ができるようになる。
2. 導入例
「禁止」は少し強い表現なので、絶対にダメという状況で導入すると良いかと思います。
例文(飛行機の機内で):
- 「たばこを吸っては いけません。」
- 「ドアを開けてはいけません。」
- 「電話をしてはいけません。」
3. 練習例
「厳格なルール」が必要な場所や、トラブルが起きそうな場面を設定します。
標識
禁止の標識を提示して、「~てはいけません」の文を作ってもらいます。

場面例:公共のルール
公園、図書館、美術館、病院など、公共の場で、してはいけない事を提示します。
【例】病院の待合室
- 電話をしてはいけません。
- 大きい声で話してはいけません。
- 走ってはいけません。

【例】病室
- たばこを吸ってはいけません。
- お菓子を食べてはいけません。
- お酒を飲んではいけません。

【会話練習】
医者: 今日は熱が高いですから、お風呂に入ってはいけません。
患者: はい、わかりました。
医者: あと、明日まで、外に出てはいけません。家で寝てください。
患者: はい。薬はお酒と一緒に飲んでもいいですか。
医者: ダメです!お酒と一緒に薬を飲んではいけません!
4. ポイント
「~てはいけません」は、目上の人や大人から子供へ、あるいは警察や掲示板など、上から下への指示・警告という性質が強いです。
友達同士で使うと、状況によっては、相手が嫌な気持ちになるかもしれませんので注意です。
「~てもいいですか」のペアとして、「はい、いいですよ(許可)」と「いいえ、~てはいけません(禁止)」という練習をしても良いと思います。
無料イラスト
この記事で紹介した3つのフレーズ「て形+ください」「て形+もいいですか」「て形+はいけません」の練習で使えそうなイラストをパワーポイントにまとめています。
下記からダウンロードできますので、宜しければお使いください。
イラストは全てAIで作成しておりますので、著作権フリーです。編集・修正等アレンジ自由です。
皆様のお役に少しでも立つことを願っております。
